2話
ようやく笑みを見せたむつに、颯介と山上は安心したように頷いたが、むつの目元は真っ赤だった。
「よし、着替えてくる。仕事する」
「そうしてくれ」
むつが鞄を持ってぱたぱたと倉庫兼ロッカールームに入っていくのを、颯介と山上は見ていた。
「むっちゃんは何て言うか、単純ですね」
「素直って言ってやれよ…西原に悪い事したってより、気まずくなって会えなくなったりするかもって思ってんだろうな…ってか、ん?むつが誘ったって事か意外だな」
山上は2本目のタバコを吸いながら、コーヒーを飲んでいた。颯介はもうタバコ臭くなる事を咎める気もないようで、何も言わない。
「そうですね。かなり呑まされたとかですかね…そもそも元彼の時点で普通なら気まずくて、会いたくないってなると思うんですけどね」
「そうだよな…何で別れたんだ?」
「さぁ?けど、仲良いですし喧嘩別れとか嫌いになったとかじゃなさそうですよね」
「ま、そこは本人たちの問題だしな。けど…むつを泣かせた西原は絞めないといけないな」
「むっちゃんには甘いですよね、本当」
「そうか?俺はわりと誰にでも優しいぞ」
「はいはい、そうですね。さて、社長も目を通さなきゃいけない書類たまってますよね?やってくださいよ」
颯介はにっこりとそう言うと、むつのマグカップを持ってデスクに戻って行った。残された山上は、タバコを揉み消すと灰皿とマグカップを持って言われた通り、仕事に戻る事にした。




