2話
「寄りは戻してない。のに、泊まった…何て言うか先輩優しいからさ、断れなかったのかなって…そういう優しい所を利用したような気がしてさ」
「罪悪感か?」
むつはうつ向いたまま、頷いた。颯介と山上は、何と言ったら良いのか分からず、顔を見合わせていた。
「もぅ…何か、どーしよ‼気まずい」
「おぉ、急に元気になった?」
顔を上げたむつは、盛大な溜め息をついた。
「元気じゃないよ。菜々の所、先輩の管轄内なの。協力をお願いしないといけないのに、こんな事になって」
「気にすんなよ。野良犬に噛まれたと思えば何て事はないだろ?」
「そんなもんなの?」
「そんなもんだろ?お前、意外と悩むよな。ぐだぐだ悩む暇があれば仕事しろ」
山上はぶっきらぼうに言ったが、その目は細められていても威圧的な感じはなく、優しげだった。
「仕事と言えば…朋枝さんから電話があったよ。携帯が繋がらないって言ってたから、充電して連絡してあげてくれるかな」
颯介からの伝言を聞くと、むつは頷いた。山上は、よしよしとむつの頭を撫でた。
「さて、むつも少し元気になったみたいだし。さ、仕事に戻るぞ…むつは着替えあるなら着替えてこい。そしたら気分も変わるだろうしな」
「うん。はぁ…遅刻したあげくに、迷惑かけてばっかで、ごめんね」
「…なら、ランチはむっちゃんの奢りで。たまには3人で行こっか」
「分かった。そのくらないなら任せて‼」




