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2話
「はぁ…何でもないよ」
「何でもない事はないだろ?」
ずずっと鼻をすすると、むつは山上から渡されたティッシュで目元を拭った。
「昨日、何かあったの?」
コーヒーを淹れると言った颯介だったが、むつの分はココアで山上と自分のはコーヒーにしていた。むつは、礼を言ってマグカップを両手で包み込むように持つと、ふぅふぅと冷ました。
「昨日?教会とか行ってたんだろ?その時に何かあったって事か?」
山上はキッチンに行かずに、ソファーに座ったままタバコを吸い始めた。颯介はキッチンに戻って灰皿を取って来て、ソファーの後ろの窓を開けた。
「呑みに行ってたんでしょ?」
颯介は山上を無視して聞くと、むつは頷いた。
「誰と?何だよ。みやか?また喧嘩か?」
「西原さんだよね?」
むつは頷いた。山上はむつが西原と呑みに行って、泣きながら出社してきた意味が分からなかったようだ。
「…泊まったんだね?服が昨日と同じだし」
「お、何だよ。そうなのか?寄り戻したって事か?で、何で泣くんだ?」
 




