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9話
握り潰してしまった事に、気付いているのか否か、玲子は人形を握り締めたまま、烏がどこに居るのかを視て確認している。鳴き声もかなり近い。
枯れ葉や土がついてる顔を手の甲で、ぐいっと拭うと玲子は再び走り出した。あと少しで、追い付ける。そう思うと、転んで打った膝の痛みも、疲れも感じずにまた全力で走れた。
目視出来る範囲に、烏を見付けた玲子は、ぎゅっと手を握って力を込めるとそちらに向かって駆け寄っていった。烏たちは、低い位置で固まって飛び回りながら、移動している。その隙間から、西原や菜々が見えた。ダリィの烏たちが、守るようにして周囲を固めているようだ。天使もその周りを飛んで、烏たちを次々と地面に落としている。
「朋枝先生っ‼」
玲子が叫ぶように菜々を呼ぶ。菜々は、声がした方を振り返り玲子が駆け寄ってくるのを見付けた。
「先生っ‼」
走りよってきた玲子が通れる分だけ烏が道を開けると、素早く玲子は中に入った。勢いよく飛び込んできた玲子を抱き止めた菜々は、玲子が1人だという事に気付くと眉間にシワを寄せた。




