2話
何だか緊張してくる行きたくない気持ちで、入るのを躊躇っていたが、意を決してドアを開けて中に入ったむつは、すぐに頭を下げた。
「おはようございます…遅くなっちゃって、ごめんなさい」
心配して待っていたのか、颯介と山上が立ち上がってむつを見ていた。元気も無さそうで、うつ向き加減のむつを見て颯介と山上は顔を見合わせていた。
「むつ。連絡もないし、どうした?携帯も繋がらないし」
「充電し忘れちゃって…それで寝坊しちゃったから」
「本当は?」
山上がむつに近寄り、顔を覗き込むように少しだけ膝を折って目の高さをむつに合わせた。
「どっちも本当なんだけど…」
唇を噛み締めて、むつは顔を上げた。その顔を見て、山上は驚いていた。今にも溢れそうなくらい、目に涙が溜まっていた。
「どうした?別に怒ってるわけじゃ…」
むつはうんと言い鼻をすすったが、それと同時にぼろっと大粒の涙が落ちた。涙が落ちると、慌てて拭ったが新たな涙が溢れてきた。そして、むつは山上の首にかじりつくように抱きついた。
「何が…あったんだ?」
「さぁ?とりあえず…コーヒーでもいれますよ」
颯介は目で奥のソファーに行くよう合図すると、山上はむつを連れて奥に入っていった。
「むつ?どうした?何があった?」
ソファーにむつを座らせた山上は、困ったような顔をしながらも、ティッシュを差し出したりして、むつが落ち着くのを待っていた。




