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8話
むつと西原が図書館を睨むように見ていると、屋上の方から烏が1羽飛んできた。ダリィは呼吸を整えるのに必死なのか、気付いていない。5人の頭上をゆっくりと回っていた烏だったが、すいっとむつと西原の方に寄ってきた。
西原が腕を差し出すと、止まり木のようにして、西原の腕に足を乗せ、羽根をばたつかせて畳んだ。
「おぉ、何か感動だな」
「鳥の調教師みたいで良いね」
むつが西原の腕に大人しく止まった烏の頭を指先で撫でた。烏も2人に危害を加える気がないからか、目を閉じて気持ちよさげにしている。だが、役目を思い出したのか、ふるふると首を振った。そして、何かを伝えるかのように鳴いた。
「何だって?」
「いや…あたしは鳥と話せないよ」
「てっ…天使が、来た。見付かったって」
荒い呼吸の間でダリィが言うと、烏は小さな頭を何度も上下に動かした。それを伝える為にやってきてくれたようだ。




