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8話
ずきずきと痛む箇所を押さえ、少し走るのが遅くなったむつは、ばさばさと言う羽根の音が、すぐ近くで聞こえて振り向いた。一定の間を開けていると思っていた天使が、すぐ後ろに迫っていた。
札を投げるか日本刀を抜くかで、迷っている間に天使はむつのすぐ後ろに来て、その背中をとんっと押した。
「…っつ‼」
手すりを掴んで、階段から落ちるのは免れたむつだったが、落ちそうな体勢には変わりない。だんっと足をついて、くるっと振り向くとむつは天使の顔を鷲掴みにした。そして、力任せに投げつけた。
だが、投げつけられた天使のすぐ後ろから別の天使が、勢いよく飛んできた。どんっと体当たりをするように、むつにぶつかった。
ふわっと足が浮いて、このまま落ちるのかと思った。だが、落下する事なく逆に浮上した。




