2話
「はぁ…」
腰にバスタオルを巻いたまま、ソファーに座りタバコを吸いながら西原は何回目かの溜め息をついた。タバコを根本ぎりぎりまで吸い、灰皿で揉み消すと西原はちらっとベッドを見た。
ふかっとした布団が丸く盛り上がっていて、かすかに上下に動いている。テーブルに置いてある腕時計で時間を確認し、西原は重い腰を上げて、ベッドに近付いた。
ベッドに座り、そっと布団をどけるとくぅくぅと寝息を立てているむつが居た。居るのは分かっていたが、こうやって見ると何だか緊張してくる。
「むつ?そろそろ起きろ。遅刻するぞ」
もぞっと身動ぎをしたむつが、うっすらと目を開けた。そして、もぞもぞと動くと西原の腰に手を回して、太股の上に頭を置いた。
付き合ってる時なら、こういう甘えた仕草も可愛いで済んでいたが、今は違う。落ち着かなくなるし、変に反応を起こしてしまう。西原はぎこちなくも、むつの長い髪を撫でた。
「むつ?」
また眠ってしまったのかと、西原は心配になり声をかけると、しかめっ面をしてむつは仰向けになった。
「…頭痛い」
「珍しいな。疲れてたんじゃないか?」
「そうかも…」
むつは目を開けているものの、まだぼんやりとしているようだった。




