2話
「むつ、お前明日仕事だろ?終電逃してるし早く帰った方が良いぞ、タクシー拾ってやるから」
「とし君は?」
「休み」
「なら、もう1件行こ。それとも…休憩でもする?お泊まりでも良いけど」
むつがくすくすと笑いながら言うと、西原は気まずそうにぼりぼりと頭をかいた。
「…そういう事はさ、男が言うもんだろ?」
「そう?じゃあ…言って?」
そんなに呑んでないはずなのに、むつは酔っているようで少し潤んだ目で西原を見上げていた。西原は困ったような顔をした。そして、深い溜め息をついた。
「むつ…」
「はぁい?」
「はぁ…もう1件行こうか」
悩んだあげく西原がそう言うと、むつは嬉しそうに頷いた。そして、ぴったりと隣に並ぶと次はどこにしようか、と無邪気に笑っていた。
ほんのりと甘い香りのするむつと並んで歩きながら、西原は自身に落ち着くように言い聞かせていた。酔った勢いで泊まりだなんて、いくらむつが言い出したからと言って何もしないでいられる自信がない。本人は気付いてないのかもしれないが、来た時からボタンを2つも外してあり谷間が見えている。それだけでも目のやりばに困る。むつが店を見ながら何かを言っているが、全然そんなのは頭に入ってこなかった。




