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8話
「へっ…ふぅっ‼」
ぐいっと襟を引っ張られて、むつは尻餅をつくようにして転んだ。ずきっと横っ腹辺りが痛んだが、それ意外は何ともない。
「うぉっ…」
びゅんっと音を立てて、目の前を何かが通過した。腐った臭いと動物の臭いがして、烏だなとかろうじて分かった。
「俺らは静観だな」
耳元で低い声が聞こえて、むつは思わず身震いをした。肩に顎を乗せて、西原がはぁっと溜め息をついた。
びゅんびゅんと目の前を烏が飛んでいき、その中ひるむ事もなく、むしろ喜んで天使たちが突っ込んでいっている。そして、手に掴んだ烏をばりばりと噛んでいる。
「えげつない光景だな」
ぼとんっとむつの足元に、烏の首が落ちてきた。ころっと転がった首は、光の宿らない目でむつを見ているようだった。
「うん…出る幕なしだね」
 




