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8話
こそこそと歩き、時々隠れてを繰り返し、植物園に着く頃にはむつは疲れてきていた。
「遅かったな」
「…警察が多すぎる。邪魔なんだよ」
真っ暗な中から聞き慣れた声がした。むつは、うるさそうにひらひらと手を振った。ソファーに座って、のんびりとタバコを吸っている西原が、鼻で笑う気配がした。
「邪魔って言うな。仕事だ仕事」
「サボってるくせに」
「サボってないだろ?こうして、外部との情報交換も大事な仕事だ。で、大丈夫か?」
いっよっこらしょとむつはソファーに座ると、指先に小さな炎を灯してテーブルにあるタバコを見つけ出した。1本出してくわえると火をつけた。
「あぁ…疲れた」
「だろうな」
「あ、それより…見付かったらヤバい物、色々隠してくれたでしょ?ありがと」
「退学なんてなったら、宮前さんたちが悲しむだろうからな」
にやにやと西原は笑った。退学も何もそもそも、とっくに高校は卒業しているのだ。むつからしたら、願ったりかなったりだが、まだそういうわけにもいかない。それに、冬四郎はきっと悲しむより、嘆くんだとむつは思っていた。




