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8話
お盆に紅茶をいれたカップを並べて、持っていくと上級生にさせて悪いと恐縮してか、玲子もだが他の生徒もぺこぺこと頭を下げていた。
玲子と連れてこられた生徒をベッドに座らせ、むつと菜々は絨毯の上に座った。紅茶を飲み、少し菓子をつまんでから、むつはこほんっと咳ばらいをした。
「わざわざ来て頂いて、本当にありがとう。木戸から聞いてるかもしれないけど、少し2人かはお話を聞けたらと思ってるの」
むつがゆっくりと優しい話し方で言うと、下級生たちはほんのりと顔を赤らめた。むつはそれを照れではなく、緊張だと受け取ったのか、より一層柔らかな笑みを浮かべた。
「あ、あの…宮前先輩のご期待に添えるお答えが出来るかは分かりませんが…」
「うん、ありがとう。でもそんなに、固くならないでくれると嬉しいかな。分からない事は、分からないで良いからさ」
カップを床に置いて、むつは2人の下級生の手をそっと取ると軽く握った。むつのひんやりと冷たい手とは反対に、下級生たちの手は熱いくらいだった。




