8話
何に襲われたのかは分からないとして、何があったのかを全て話した。もちろん天使の事も自身が力を使った事も言わない。ただ、なぜ寮から離れた場所に居たのかという話になると、むつは少し悩んだ。
「…寮から離れた所に居たのは、必死に逃げたから、という事ですね」
西原が助け船を出すように言ってくれると、むつは素直に頷いた。その後のなぜ大声を出して助けを求めなかったのかなどに関しては、怖くて声も出なかったという事になった。西原が機械的にメモを取る中、むつはうつ向き髪の毛で顔を隠しながら辺りの様子を見ていた。
対話をするのには西原しかいないが、パーテーションのすぐ向こうに警官が居てじっと監視をしているようだった。
「はい…それで、昨夜は眠れましたか?」
「え、あ…はい」
事件の事とは関係のない話になり、むつは少しきょとんとした顔をして西原の方を向いた。
「なら良かった。怪我もされてるようですし、先ずはゆっくり心身ともに休めてください。ご協力、ありがとうございました。また何かお話を伺わせて頂く事があるかもしれませんので、その時はお辛いかと思いますがご協力をお願いします」
にっこりと西原が笑みを浮かべたのを見て、むつもつられたように笑みを浮かべた。




