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2話
ようやく飲み込んだむつは、おしぼりを西原に向かって投げた。だが、西原はそれを受け止めると畳んで、むつの前に置いた。
「あ、ありがと」
「ったく…何を聞いてるんだ?」
「行方不明者が出てるって事よ。とし君も知ってるでしょー?」
ふいに名前で呼ばれた西原は、少しきょとんとした顔をした。たまに、何かの切っ掛けで昔の呼び方をされるたびに、西原は少し落ち着かない気持ちになっていた。
「知ってる…やっぱり何か関係があるのか?」
「分かんないから調べる。けど、要塞的な学園から抜け出すにしても…シスターが死んだ後に起きてるってなるとやぱ不安要因にはなるよね」
要塞的なとむつが言うと、西原も頷いた。山の中に建っているうえに、学園の回りには高い壁もあるし、門には守衛もいてなかなか出入りが厳しい所から女の子が抜け出すのはそう簡単な事ではない。
「内部犯行だよな」
「その可能性が高いよね…ね、その行方不明者の方もまったく分からない感じ?」
「そんな感じ。菜々ちゃんに役立たずって言われたよ」




