1話
剣道部の部長と共に食堂に入った、宮前先輩は沢山並べられている料理からオムライスを選び、サラダとスープを皿に取ると端の席に座った。部長はグラタンとサラダとスープだった。
「凄いよね…食券買わなくても色々選べるっていうのが」
「前の学校では食券だったんですか?」
「うーん、まぁね。あとは自炊とか」
2人が食事をしながら、話をしていると数名の女子生徒が遠巻きに2人を見ていた。こそこそと囁き合い、宮前先輩をちらちらと見ていた。
「キッチンのある寮だったんですか?」
「って言っても電気コンロが1つだけよ?ここの寮は、電気ポットしかないからカップ麺しか出来ないね」
宮前先輩は、観察されてるのを知っているのか、スプーンを口に運ぶ前に溜め息をついた。
「ファンクラブでも立ち上がりそうですね」
「うーん?だから、友達も出来ないのかな?部長みたく接してくれる子居ないわ。なーんか避けられてる感じ?」
「そのうち、みんな慣れますよ。わたしも最初は困りましたからね、何か学園では見掛けない雰囲気の人でしたから」
「お嬢様ばかりだもんねぇ」
宮前先輩は、オムライスの最後を口に入れるとスプーンを置いて紙ナプキンで口元を拭った。
溜め息も困った顔も、満面の笑みも、ケチャップを口元につけていようとも、宮前先輩は生き生きとしていて、器としてはとても良さそうだった。