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2話
「あーっ」
「おっさんか」
むつがジョッキを置いて、口についた泡を指でぬぐうと、西原がくすっと笑った。むつは、ちらっと灰皿とテーブルに並んだ料理を見て30分以上前に来てたなと思った。
「さて…お話しますか?」
「早いな。そんなに気になるか?」
「んーあんまり呑まないうちに聞いておいた方が良いかなって思ってさ」
「そうだな…ってお前バイクだったんじゃないのか?呑んでるけど」
「家に置いてきた。だから遅くなっちゃったの、ごめんね」
今日は酔うのが早いのか、むつの目が少しとろんとした眠そうなものになっていた。意外なものが見れたと西原は少し、驚いていた。
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ?まだ1杯も呑んでないし」
むつはジョッキを傾けて見せた。まだ半分は残っているが、珍しくも少し危うい感じだった。




