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7話
最後の一口を吸ったむつは火を揉み消して、缶の中に吸い殻を落とした。
「先輩の手当てしてくれたの牧師さんなの。あの人、治癒能力があってね、それで傷口を塞いでくれたの」
「あ…え?そうなの?本当?へぇ…うん、それで?むつ、牧師様と顔見知りだっけ?」
「ううん、昨日初めて顔見た。一昨日さ、菜々と教会に忍び込んだ時の事、覚えてる?絵から天使が出てきたの」
教会のベンチに隠れて、息を殺してその様子を一緒に見ていた菜々は、こくこくと頷いた。
「あの時、誰かが入ってきて、声をかけてたよね?それが牧師さんだったの」
「ふん…えーっと?つまり?よく分かんない。天使と居たのは、牧師様で先輩の怪我を治してくれたのも牧師様」
「そういう事」
説明終わり、とでも言うかのようにむつが頷くと、菜々はむつの顔に手を伸ばすとぎゅぅぅっと頬をつねった。




