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1話
そのあとも、むつは下段に構えたりとして学生たちを変に警戒させていた。学生の竹刀を下から叩いて弾き飛ばしたり、容赦なく胴を叩いたりと、むつの勢いは止まらなかった。現役の頃みたくは動けないと言ったわりに、身軽な動きだった。
「うーん、あんたってば喧嘩慣れしすぎ」
「ふん、何でも勝てば良いんですよ。防具もないんですからね」
当たり前のように言うと、小川は困ったような顔をしてみせたが、口元には笑みが浮かんでいた。むつは乱れた髪の毛をかきあげた。髪の毛は乱れていても、呼吸は上がってない。
「じゃ、お手伝いして貰いますよ」
「何を調べんのよ?」
「悪魔についてかな。けど1人で出来ますから…可哀想な学生にはジュースの1本でも奢ってやりますよ」
むつは鞄から財布を出すと、学生たちに声をかけてぞろぞろと外に出ていった。




