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6話
『夕方にはそっち戻るから。ちゃんと飯ぐらい食っておけよ?菜々ちゃんが、また吠えるしな』
「ん、それもそうだね。分かった…大丈夫そうで良かった」
『おう、じゃあまた後でな』
通話を終えたむつは、はぁーっと溜め息をついて菜々を見上げた。菜々は、つんとそっぽを向いている。
「菜々?ありがと」
「ふんだ。全く…あんたらしくもないわね。そんなに心配だったんだ?」
「まぁそれもあるけど。相手が何なのか全く分からない不安もあるし…やっぱり生徒じゃ不便すぎるよ。毎回、窓から脱走って不良みたいだし」
むつが不貞腐れたように言うと、菜々もそこは同情してくれるのか、困ったような顔をしていた。だが、すでにある程度は顔を知られてしまっている。そのタイミングで臨時講師という名目に変えるわけにもいかないし、警察です、と言うわけには、もっといかない。




