6話
むつは顔を隠すように腕を乗せている。菜々は、ちらっとむつを見たがすぐに視線を反らした。
「それで先輩は?」
「無事だよ…たぶん」
「たぶんって何でよ?一緒に居たんでしょ?何で分からないのよ」
菜々のイラついたような声を聞いて、むつはどこまで話そうか悩んだ。牧師であるノアの事は黙っていた方が良いような気がしていたのだ。
「…手当てして貰ったの、とある人にね。朝方まで一緒だったけど、その時までしか知らない。あたしは誰かに見られて怪しまれると困るでしょ?一応、生徒だもん。だから、明るくなる前にここに戻ってきたから」
「電話とかしてみたら良いでしょ?何を気にしてんの?責任感じてるわけ?いっちょまえに」
「ほっとけ…責任って言うか、まぁそうだね。巻き込んだ気がするから…手当て出来る人居なかったら、あの出血じゃ助からなかったかもって思うし」
むつは、はぁーっと溜め息をついてうつ伏せになった。そして、菜々の腰の辺りに額をぐりぐりと押し付けた。
「なぁによ‼もぅ気持ち悪い‼」
「うるせぇよ‼悩んでんだよ、どーしたら良いのか分かんないんだから」
「ばっか‼連絡しなさいよ‼携帯‼」
「どっかいった」
「木戸さん、むつの携帯探してちょうだい」
壁際に立っていた玲子は、菜々に言われるとベッドの回りや机の上を見た。そして、ベッドの下に落ちていた携帯を見付けると菜々に渡した。




