1話
パンツスーツの下に履いていたストッキングも脱いできたむつは、竹刀を片手に持つと軽く振った。
「さて…いつでも良いよ」
パンツスーツに裸足で、シャツのボタンを2つも外してくっきりとした谷間を惜しげもなく見せてはいるが、竹刀を片手に肩をとんとんと叩いてるむつは、何となく厳しい体育の先生のようだった。
「なら、部長から行く?」
小川に言われ、身体の大きな男子学生がおずおずとむつの前に出てきた。完全にむつの雰囲気に押され気味だった。
「防具もつけない女だと思ってると負けるよ」
むつは竹刀を正面に構えずに、左腰の辺りに添えて真剣を持っている時のような構えを見せた。
「始めっ‼」
小川の声と共に、だんっと床を鳴らして踏み込んできた学生の一太刀をするっと避けたむつは、背後に回っていた。学生が遅れて振り向いた時には、下から振り上げられた竹刀が、ばちーんっと面を叩いていた。
「まずは1人」
余程の勢いだったのか、よろけた学生はぺたんっと尻餅をついた。むつは、にやりと笑うと手を伸ばして、学生を立たせてやった。
「今のは剣道ですか?」
学生が呆然とした様子で言うと、むつはふふっと笑った。
「実践向きなね」




