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6話
「あぁ、手がもう塞がってましたね」
男はずりずりとサイドテーブルを引き寄せ、その上に灰皿を置くと改めて、むつにタバコを差し出した。むつはマグカップを置いて、1本貰った。
「何から何まですみません…頂きます」
ライターは無くともむつは指先に灯した小さな炎で、器用にタバコに火をつけた。男がタバコをくわえると、火を灯したままの指先を男の方に向けた。男はタバコをくわえたまま、にやりと笑うと火をつけた。
「便利なもんですね」
ぷはーっと煙を吐き出し、男がむつの指先を見ていた。むつは、曖昧に笑ってみせるだけだった。
明るい所で、落ち着いて男を見てみると意外と若い。そのうえ、髪の毛は金髪だし瞳は緑がかった綺麗な色をしていた。流暢にそれも丁寧な言葉を使うが、日本人ではないようだ。




