1話
隣で着替えながら、部長の目は宮前先輩の方にちらちらと向いていた。胴着の下からは、ボリュームのある大きな胸が黒いレースの下着に包まれていた。尻には肉が少ないが、程よく柔らかそうだった。
「なーにーよー?」
「えっ‼いや、何でもないです。レースの下着って大人っぽいですよね」
宮前先輩は、苦笑いを浮かべて背を向けた。そして、ボディシートで身体をさっと拭くとシャツを羽織りボタンをしめていった。ハイソックスではなく、黒のタイツをはいてスカートをはくとヘアゴムを外した。
「さて…小鳥ちゃんたちは散ったかな」
「どうでしょうね」
「そんなに転入生って珍しい?」
着替えを終えて、髪の毛は櫛を通していた部長が宮前先輩を振り返った。
「珍しいですよ。珍しいうえに、美人で強いなんて噂が出ちゃえばそりゃあ見たくもなりますよね」
「強いは否定しないけど。美人じゃなくて残念って噂はまだ流れないの?」
「残念ながら出てませんね」
宮前先輩は肩をすくめせ見せた。部長は、そんな気さくな宮前先輩を好ましく思っていた。アーモンド形の瞳は大きく、ぱっちり二重瞼で美人というよりは可愛らしさがあるが、淵の細い眼鏡のせいか知的美女的な雰囲気がだった。
「女子校って…不思議な所だよね」
「まぁ女しか居ませんからね」
「怖いわ。檻の中のパンダってこんな気分で晒し物にされてるのかしら?」
「先輩はパンダほど可愛くないから大丈夫です」
宮前先輩は、くっくっくと笑うと、お腹空いし食堂直行しようと言いスクールバッグを斜めにかけた。転入早々、鞄の改造をして斜め掛け出来るようにした点も、人目を引く要因になった事など本人は知りもしなかった。