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6話
出血はかなり酷かったのだろう。ベッドのシーツが真っ赤に染まっている。むつはタオルを膝に置いて、西原の手をぎゅっと握った。傷口は塞がったが、西原は眠ってしまっている。もう大丈夫だと言われても、西原が目を覚ますまでその言葉を信用する事も出来ない。
「君も少し休んだ方が良いですよ。あんなに力を使って、疲れてないはずないんですから。隣にも部屋があって、そこにベッドありますから」
男は、桶を片付け手を洗って戻ってくるとむつにそう言ってくれたが、むつは首を横に振るだけだった。西原が起きるまでは、そばを離れるつもりはなかった。
「頑固ですね…なら、少しお話でもしますか?天使の事とか烏の事とか…その前に。お茶入れてきます」
むつも天使の事や烏の事については、話をしたかった。それに、男の事についてや、あの場にいた生徒の事についても。




