296/718
6話
むつはなるべく痛くないようにと、ゆっくりと西原の身体を寝かせるとベッドから離れた。西原は、うめき声を洩らす事はしなかったが、顔をしかめている。息も荒く、苦しげだった。
「汗、拭いてあげてください。そこ、座って良いから、側に居てあげて」
男に言われ、むつは机に置いたタオルを手に取ると、西原の顔にびっしょりと浮かんだ汗を吸い取るように、タオルを軽く押し当てた。
むつが汗を拭いていると、男は西原の傷口に手を当てた。痛みで西原がうめき起き上がろうとすると、むつは男を止めようとした。だが、男の手が微かに光るのを見ると、むつは西原の額を押さえるようにしてベッドに戻した。
西原はぎゅっと目を閉じて、歯の隙間から漏れるようなうめき声を上げていた。だが、むつが優しく頭を撫で、シーツを握りしめていた手をほどいて、自分の手を絡ませると、ほっと息をついた。




