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6話
「先輩っ‼あ、ごめんね、待ってて‼」
むつは芝生の上に天使を寝かせると、走って西原の所に戻った。途中で落とした刀を拾い上げて、再び振るった。腕が疲れていて、片手で振り回すのには限界だった。むつは、両手で刀を握ると、はぁーっと息を吐いた。
そして、普段ならあまりしない上段、頭のあたりで刀を構えた。刀を振り下ろすのは、あまり得意ではないがそろそろ腕が上がらないのだから、仕方なかった。
あと少しで西原に手が届く所まで来るとむつは、刀を投げ捨てると尻のポケットから札を出して投げた。一気に燃え上がり、オレンジ色の明るい光に辺りが包まれるとその隙にむつは西原の腕を掴んで烏の群れの中から出た。
「助かった…目がちかちかするけどな」
「目眩ましだから仕方ない」
烏にも効果があったのか、その場で右往左往し、ぶつかりあって地面にばたばたと落ちていく。
むつはその間に、呼吸を整えて刀を拾うと鞘に戻した。西原の方は、羽根まみれとなったジャケットをぱたぱたとはたいている。




