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6話
烏に追い付かれ、つつかれている天使の白い羽根がひらひらと舞っている。どう見ても子供を餌としてターゲットにした、性悪な烏の群れにしか見えない。先程まで、天使が凶悪な笑みで素手で烏を捕まえ、むさぼり食っていたが今は立場が逆転している。食われ殺された仲間の仕返しとでも言わんばかりに、烏は尖ったくちばしを天使の柔らかそうな肌に突き立てている。
追い付いた西原は、烏のくちばしにつつかれながらも、その中から天使を抱き寄せるようにして助け出そうとしている。後から追い付いたむつは、形振り構っていられないのか、素手で烏を掴んで乱暴にも地面に叩き落としている。
むつと西原の奮闘があってか、身動きがとれるようになった天使は、ぷっくりと桜色の唇を大きく開けると、少し離れた場所に立っている生徒の方に向かおうとしている。
むつは、この烏の群れや天使を見ても動じる事なくただ、立っている生徒を不審に思っていた。驚きもせず、ただじっと事の成り行きを見ているような、そんな雰囲気だった。




