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6話
木の上からは、ぎゃあぎゃあっと烏の鳴き声が聞こえくる。落ち着きないのか、辺りを飛び回ったりして、木々を揺らしている。
むつと西原が、じっと身を伏せて教会を見つめていると、ようやく扉が開いた。勿体ぶるかのように、ゆっくりときぃぃと音をさせて開いた。
「さっきの奴だ」
西原が見張っている時に、教会に入っていった人物が腕に何かを抱いているかのように、出てきた。暗くてよく見えないが、赤ん坊を抱いているように見える。
むつは、膝を曲げて猫が伸びをしているような尻を突き出す体勢になった。左手の日本刀の鯉口を早くも切っているのか、ちゃきっと音がした。
教会から出てきた人物は、木々に烏が集まっている事を知っているのか、出てきて数歩進んだだけで、立ち止まった。そして、辺りを見回すようにして、ぐるりと首を巡らせた。




