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6話
西原がじっと教会の方に目を向けていると、後ろから肩を引っ張るようにして掴まれた。今度こそ悲鳴が出そうになったが、口を開く事も出来ない程に驚き全く動けずにいた。
「少し下がって様子みよう」
「お前っ‼」
思わず大きな声が出ると、白くひんやりとした手で口を塞がれた。まだ突然の事に状況も飲み込めないし、心臓もばっくんばっくんと鳴っている。こんなに、脈が早くなる事が多いと長生き出来ないのではないかと、思える程だった。
「怒らないで。心配だったの」
全身を黒でまとめ、目元だけしか見えていないが、むつが悪気もなさげにそう言った。そして、驚いている西原を連れて烏の集まっている木の下から離れた。




