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6話
西原の足の上をよじのぼってきた人形は、あぐらをかくように座ると、目も口もない顔をじっと西原に向けていた。
「まぁメール見たよ。けど、気になるだろ?お前もだから、来たんだろ?こんな役立たずのぺら紙で」
むっとしたのか、人形が手を突き出した。西原が何かと思って顔を近付けると、人形の手がぼんっとオレンジ色の炎に包まれた。ライターの火のようなサイズだった。
「タバコにつけるには良いかもな」
「あら、もっといけるわよ?試す?」
「いや、大丈夫。むつが来てくれて心強い」
取り繕うように西原が言うと、人形はふんっと鼻を鳴らした。そして西原同様、教会の方に顔を向けた。まだ何も動きはないのかもしれない。
西原は人形の頭の部分をつまむと肩に乗せた。人形は何も言わずに、西原の肩の上に座ると短い足をぷらぷらとさせた。




