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5話
考えていた事をずはり当てられ、むつは頬を掴んでいる西原の手をどけると、ちろっと下唇を舐めた。そして、困ったように笑った。
「出ないって約束して欲しいんだが」
西原の真剣な声にむつも真剣に答えた。
「それは出来ない、今は」
真っ暗な中で、お互いがどんな表情を浮かべているのかは分からないが、むつと西原は向き合っていた。どっちも引かないつもりだった。
「ここが普通の学校なら構わんさ。けどな、簡単に入れない陸の孤島みたいな場所だぞ?何か起きても湯野さんも祐斗君もすぐに来れない。だから出るなって言ってるんだ、危ないからな」
「でも、夜に見た天使を連れた男が言ってた食事が生徒だとしたら?それを確かめるくらい良いでしょ?無駄に犠牲が増えるより」
「確かに」
西原を説得出来たのだとむつは、少しほっとして喜んだが、西原は、でもなと続けた。
「犠牲者が出ないようにするのは、俺らの仕事だからな」
「あ、それは確かにね。って事は、学園内で見張りか何かするつもり?」
「そうだ。だから、出るな」




