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5話
暗い中で、ぼんやりとオレンジ色に燃えるタバコの火を見ながら、西原は煙りと一緒に溜め息をついた。
「だから出るなよ?」
「…分かった」
答えるまでに少し間が空いたが、西原は何も言わずに頷くとタバコを吸って、とんとんっと灰を缶の中に落とした。もう一口吸うと、火を揉み消して缶の中に吸い殻を落として、紅茶を飲んだ。その動作をむつは、横目で黙って見ていた。
「嘘つくんじゃない」
西原は片手を伸ばして、むつの両頬を掴んだ。頬をむにむにと押され、変な顔にさせられながらも、むつは黙っていた。
「分かりやすい嘘ついたな。ちょっと悩んだんだろ?言う事、聞こうかなって、なぁ?おい」
「ふぁい」
「けど、昨日の夜の事もあるから出るつもりなんだろ?そうだな?」




