247/718
5話
「何?」
にこにこしながら、西原に見られていた事にむつは気持ち悪そうに身動ぎをした。
「ちょっと元気出たのかなと思ってさ」
西原が入って来た時、辺りが暗いせいもあるのかもしれないが、むつは落ち込んでいるようにも見えた。あんな死体を見たのだから、仕方ないのかもと思ったが西原には心配でならなかった。それに、植物園に来れるか分からないにも関わらず、ずっと待っていたというのも気になっていた。
何も話は、今日しなくてはいけないわけではない。夜に電話かメールでだって話せるのに、むつは西原を待っていた。待っていて貰えた事に嬉しさを感じつつも、人気のない暗い場所にずっと居たせいで、余計な不安なんかを感じさせたのではないかとも思っていた。
「元気は元気かな…たぶん」
「元気なわけないだろ?あんな現場見てんだからな。俺だって、あんな酷いのそう出会う事ないんだからな」




