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1話
むつが謝ると、電話越しに溜め息が聞こえてきた。だが、あまり気にはしていないのか、西原は本題に入った。
『お前、今日時間あるか?』
「え、呑みに行くならそのうちにって昨日言ったばっかりじゃん、しつこい」
『朋枝学園の話でもか?』
「あ、行く行く。行きまーす」
『…仕事終わったら迎えに行く、携帯だけは気にしといてくれよな』
また連絡すると言って西原からの電話は切れた。むつは受話器を置くと、ぬるくなったコーヒーを飲んだ。そして、言われた通りに携帯のマナーモードをオフにした。
「デートっすか?」
祐斗が頬杖をついて、にやにやしながら言うと、むつはにっこりと微笑んだ。
「そうよ、化粧濃くした方が良いかな?…ま、それよりちょっと出てくる」
「話を聞きに?」
「うん、何か…宗教学としては分かっても、実際にどうなのかは分からないからね」
むつはパソコンの電源を落として、上着を取ってくると夕方までには戻るからと言い出ていった。




