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5話
さくっさくっと芝生を踏みながら歩いていくと、鬱蒼と繁っている森が見えてきた。一応、整備はされているようで石畳の小道がある。
「こっちまで来たの初めてだ」
「学園の中、散策してないのか?」
「中心部分ばっかりだから」
むつは木々を見上げた。しっかりと剪定されていて、明かりが入ってきている。
「烏は居なさそうだな」
「そうみたいね」
西原もそれが気になっていたのか、木々を見上げている。烏が居そうな雰囲気はない。小鳥のさえずりと、柔らかい風が吹いている。夏場なんかは、避暑としては最適そうな場所だった。
「こんな広大な敷地のある学校ってそうそうないだろうな…大学が併設されててなら分かるけど」
「けど、大学をこっちに移す案も出てるみたいよ?移すってか、増やすだけど」
「学園経営って儲かるのかねぇ?」
「さぁ?かなり上手くやらないと今のご時世、子供も少ないし取り合いよね」
むつはそんな話をしながら、辺りをキョロキョロと見ている。特に何か出そうな気配はないし、景色としては木々の間を通っているだけだから変わらないが、癖なのかもしれない。




