1話
「全然、理解出来ないな」
うーんっと腕を持ち上げて、上体を伸ばしたむつはそう呟くと、目を擦ってパソコンの画面に再び目を戻した。だが、すぐに飽きたのか立ち上がった。
「ふん、コーヒー飲む人?」
むつがそう言うと、3人とも黙ったまんま手を挙げた。代わりに淹れますよ、なんていう発言はなかった。むつはタバコを持ってキッチンに行くと電気ポットに水を足して、沸くのを待つ間にタバコを吸い始めた。
マグカップにインスタントコーヒーをいれて、祐斗にだけは砂糖も一緒に入れた。そして湯を注いで、やはり祐斗のにだけはミルクを入れて、くるくるとかき混ぜてやった。
「むつさん、電話。西原さんからです」
「西原さんってあの西原さん?」
「そうっす、むつさんの先輩の西原さん」
お盆にマグカップを乗せ、タバコを濡らして消すとむつはお盆を祐斗に渡して、電話に出た。
「はい、お電話代わりました」
『…はい、そんな対応されると何か話にくいな』
祐斗の言う通り、むつの先輩で昨日も電話をした巡査部長の西原 駿樹だった。
「何?ってか、携帯にかけてくれたら良いのに」
『掛けました。出ませんでした』
西原の少し尖った言い方に、むつは机に置いてある携帯を手に取った。確かに西原からの着信が2件あった。
「ごめん、気付かなかったや」




