222/718
5話
むつと玲子は床であるにも関わらず、直接座り込み竹刀を分解しては、あれこれと話している。そして、むつはごそごそと荷物の中から出した箱のフィルムをぴーっと剥がすと、箱から棒状の物を出して、床でとんとんとんっと叩いている。
のんびりと紅茶を呑んでいた菜々は何の音かとむつのほうを見て、ぎょっとしていた。
「ちょーっ‼むつ、普通に何してんの‼」
「へ?」
口にそれをくわえて、むつは菜々の方を振り向いた。普段よく見る、むつのくわえタバコスタイルだった。
「西原ぁ‼」
「やべやべっ‼むつ、しまっとけよ‼ばか」
「あ、ごめーん」
むつは謝りながらも指先に小さな炎を灯すと、じじっとタバコの先端に火をつけた。そして、深く吸い込むとゆっくりと煙を吐き出した。
「木戸、これ内緒ね」
人差指を唇に押し当てて、むつが悪戯っぽく笑うと玲子もつられて笑い、頷いた。




