1話
むつは、報告と雑談を終えるとすぐに出ていくのかと思ったが、倉庫に入っていったきり、なかなか戻って来ない。がたがたと何かを探したり、咳き込んだりする声が聞こえている。やがて、物音も咳き込む声も聞こえなくなったが、むつは出てこなかった。
気になったのか山上が、そぅっと覗きに行くとむつは立ったまま、分厚い本を片手に熱心に読み進めていた。本を持ってきて座ればと、声をかけようとしたが山上は黙ってそのまま戻ってきた。
「むっちゃん何してたんですか?」
「調べ物だな。かなり真剣みたいだし…しばらくほっといてやってくれ」
山上にそう言われ、颯介と祐斗は頷いた。
むつは山上が様子を見に来た事に気付いたのか否か、ぶつぶつと呟きながらページをめくっては戻って、開いたままの本を置くと他の本を手に取ってと、忙しくしていた。
しばらくは、本を見ていたむつだったが、ぱたんっと本を閉じるといそいそと片付け始めた。だが、また見る事になりそうな本だけは持って倉庫から出てきた。
どんっと重たそうな本を使われていない隣の机に置くと、むつはパソコンを立ち上げた。そして、かたかたとキーボードを叩きページを開くと次々と見ていく。
「集中してるむつさんてちょっと怖いっすね」
「しーっ聞こえ「てるっつーの」
颯介が言う前に、むつがかぶせぎみに言った。だが、視線はパソコンの画面に向けられていた。




