5話
玲子と食堂に行き、一緒に朝食を食べている間、むつは遠巻きに観察される様子やひそひそと何かを囁き合うのを密かに聞いていた。というよりも、聞きたくなくても大勢が居れば自然と聞こえてきてしまう。
昨日、妹志望の子を断ったのが早くも噂になっているようだった。女子の情報網は本当に恐ろしい。
むつが苦笑いを堪えながら、ほうれん草のスープを口に運ぶのを玲子は、心配そうに見ていた。
「噂って凄いですね…倍増してそうです」
「どれも噂なんてそんなもんでしょ?ま、意外とスープが美味しいのが嬉しいわ。ほうれん草の青臭い感じがないのよね…生クリームとコンソメ…あと何だろ?何だと思う?」
木のスプーンですくった一口を玲子に差し出しながら、むつは真面目な顔をしていた。スプーンとむつと交互に見た玲子は、飲めという事かとおずおずと口に入れようとした。だが、それは横からの人物の口におさまっていた。
「酸味はヨーグルトじゃないかな?」
「菜々…」
「朋枝先生でしょ?」
小声で注意をしながら、菜々は朝食の乗ったトレイを置くとむつの隣に座った。
「おはよう、宮前さん、木戸さん。宮前さん、体調はどう?」
「おはようございます」
「はーざいます…今は大丈夫そうです」




