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5話
「先輩、昨日の夜はどこに行ってたんですか?」
「え?」
温かい紅茶を飲みながら、むつが本当に驚いたような顔をすると玲子は、眉間にシワを寄せていた。
「え?じゃないですよ。わざわざ寝るときジーパンにパーカーですか?」
脱ぎ散らかしていた服を見て、むつが夜中にこっそり部屋を出た事を察したのだろう。玲子の目が少し非難めいていた。
言い訳するのもよくないと判断したむつは、黙って紅茶を飲んでいた。だが、じっと玲子に見つめられ降参したように空いている手を上げて手のひらを見せた。
「何か手掛かりないかと出てた」
「何で、教えてくれなかったんですか?」
「教えるわけないでしょー?あたしは仕事で来てるのよ?それに、昨日は結局、何もなかったし」
さらっと嘘をついたが、玲子がそれに気付いた様子はない。むつも平然と言ってのけ、紅茶をすすっていた。




