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5話
置いていかれると思ったが、むつはドアを少し開けて立ち止まっていた。隙間から外を見ているようだった。追い付いた菜々は、スーツのポケットにねじ込んでいたパンプスを出してはいた。菜々はむつが出ていかずに、待っていてくれたのかと思ったがそうではないようだった。
「やばいなぁ…」
むつはそう呟くと尻ポケットから携帯を出して、ドアの隙間から何枚か写真を撮った。そして、ドアをそっと閉めると中に戻っていき、ペンライトで照らした天井の写真も撮っていた。
「むつ?」
「とりあえず、寮に戻ろうか。これ以上は…危険だと思う。手持ちの札も少ないからね」
「うん…あたしにはもぅ何が何だか、さっぱり分からないんだけど」
菜々がそう言うと、むつは苦笑いを浮かべた。




