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5話
むつは、はーっと溜め息をつくと床に膝をついて四つん這いの格好でベンチから顔を出して、辺りを見てみた。やはり、男はむつにも菜々にも気付かずに天使を連れて外に出ていったようだ。
誰も居ない事を確認し、むつは急ぎ足で天井の絵を確認した。絵から天使が抜け出したのも見ているし、仮に男が戻ってきて見付かったとしても、こちらが後ろめたく思う必要はない。そう思ってるからか、ペンライトでしっかりと天井を照らしている。
一ヶ所だけ不自然に隙間のある部分。そこがおそらく、あの天使の描かれていた場所なのだろう。
「むつ、どういう事なの?」
「絵から天使が出てきた」
「それは、あたしも見たわよ」
「あっ…男を追う‼」
むつはペンライトを持ったまま走り出した。菜々も慌てて追ったが、ストッキングのせいで滑ってしまい、思うようには走れなかった。




