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1話
コーヒーをすすりながら、むつは眠たそうに目を擦っていたが、空になった3人分の皿を片付けると、パソコンの電源を入れた。
「祐斗、ゆっくりで良いからミスないように早く仕上げて。眠ったいや」
「はい…」
欠伸をして、目尻に浮かんだ涙を拭いながらむつは矛盾した事を言ったが、祐斗も颯介も何も言わなかった。
むつはキーボードの上に置きっぱなしの眼鏡をかけると、何度も大きな欠伸をしながらキーボードを叩き始めた。手元を見ずに、かたかたと打ち続けるむつを見て、祐斗は少し焦り始めた。むつより先に事務作業をしていたのに、終わるのがむつより遅いわけにはいかなかった。
そんな祐斗の焦りに気付かないむつは、左手にコーヒー右手でキーボードを叩くという器用な事をしていた。
「あ、社長にメールしよーっと」
むつはやりかけの事務作業を中断すると、メール画面を開くと社長である山上にメールを送った。




