5話
こつーんこつーんっと菜々のパンプスの音が、反響して大きく響いている。昼間にはさほど感じなかったが、夜になり辺りが一層静かになったからか、余計に大きく聞こえる。
自分から言い出したわりに怖いのか、菜々は自分の足音にびくびくしながらむつの腕をぎゅっと握ってきた。
「菜々、痛いよ」
「ごめん…慣れた場所なのに怖くって」
「なら、来なきゃ良かったのに」
むつは呆れたように言いつつ、腕から離した菜々の手をぎゅっと握った。ひんやりとしたむつの手とは対称的に菜々の手は、熱いくらいだった。
「1人にするのも良くないわよ。一応、生徒なんだから、わたしは先生よ」
「はいはい。教員根性ね」
「そういう事。に、してもあれね。子供の頃、夏休みにした肝試しを思い出すわ。あの時も一緒に手繋いで歩いたもんね」
「うん。で、その後、うちと菜々の両親にしこたま怒られた」
むつは、苦い思い出なのか顔をしかめた。だが、菜々は面白そうにすくすくと笑っている。
「あれは夜中だったからよね」
「それもあるし。立ち入り禁止の崩れそうな病院に行ったからってのもあるね」
「あーそうね。変な人においかけ回されたもんね」
「帰りにね。鎌持ってたね、草苅とかで使う」
「それで、逃げてる時に探しに来てくれてたあんたのお兄さんたちに助けて貰ったのよね」
「そう。その後の夏休みは1人での外出は禁止になった」
「プールにもお兄さん来てたもんね。ま、うちもお母さんがずっと一緒だったけど」




