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4話
「あ、そうそう。忘れる所だった…連絡先の交換しないとね」
むつも携帯を持ってきて、玲子と連絡先の交換をした。第一の目的は果たせた。あとは、玲子を大人しく部屋に帰らせるだけだった。
「何かあったらすぐに連絡するから、気付けるようにだけしておいてね」
「はい…それで、先輩たちは何をするつもりなんですか?」
むつはにっこりと笑みを浮かべた。菜々でも、あまり見た事のないような、営業的な笑みだった。
「今日はもう何もしない。明るいうちに隅々まで調べてから、また考えるつもり…手掛かりが何もなく動くのは危ないと思うからね。夜、烏の襲撃にあったら逃げ切れるとも思えないし」
演技なのか本気なのか、むつは眉間にシワを寄せて少し悔しそうに言った。
「だから、木戸も夜は動かないで。不審な事に気付いたら、すぐに教えくれる?約束して」
まだリボンにお揃いのピアスをつけた体勢のままのむつは、さながら姫を守る騎士のように、方膝をついて玲子の手を取っていた。そんな状況で真剣な目で真っ直ぐに見つめられた玲子は、顔を赤くしてこくこくと頷いている。




