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4話
「ありがとう」
「ありがと、木戸 。部屋に戻っていいよ?勉強とかあるんじゃないの?」
紅茶を受け取ったむつがそう言うと、玲子は首を横に振った。そして、ちょこんっと椅子に座った。ベッドに座っているむつと、菜々は顔を見合わせた。
「…木戸 ?」
「む、むつ先輩のお手伝いをしようと思ってますので…迷惑でしたら部屋に戻りますけど」
恥ずかしそうにむつの名前を言い、そう申し出た玲子は少し不安そうな顔をしていた。
「迷惑だなんて思ってないけどさ。木戸 のする事じゃないのは分かってるよね?あたしは仕事で来てるから」
「そうですけど…」
むつは菜々の方を見て、困ったような顔をした。玲子の申し出は、凄く嬉しいし頼もしい。だが、生徒をこれ以上、巻き込んではいけないとも思う。
むつに断られていると分かっているのか、玲子は少し悲しげな顔をしている。そんな顔をされると、むつも弱い。紅茶のカップを机に置くと、隣に座っていた菜々との間を少し開けて、そこをぽんぽんと叩いた。




