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4話
「はい、かなり集中しないと出来なくて…だから、少し時間もかかるんです。机の中には…」
玲子は紅茶の入ったカップを机に置くと、黙ってじーっと一点を見つめている。むつはその間、うどんをすすったりして音をたてないように、息を殺して待っていた。
「…チョコ?それに…大福?」
「おぉ。正解、正解」
「何でこんなのあるんですか?」
むつは笑いながら、引き出しを開けるように言った。玲子はゆっくり引き出しを開けると、奥の方にチョコレートと大福が隠すように入っていた。
「菜々が持ってきてくれたの。食べても良いよ、糖分取ってしっかり勉強でもしなよ」
「他人事ですね」
「まぁ他人事ですよ。あたしの本分は勉強じゃないんでね…で、その透視能力は遺伝みたいなもの?」
玲子はチョコレートにも大福にも手を伸ばさずに、引き出しを元に戻した。
「たぶん、祖母がそうだったらしいですが…会った事がないので分からないんです」
「もうお亡くなりに?」
「そうです。なので、この能力を知ってる家族は居ませんし…だから、実家を出た感じなんですよ」
むつは再び、うどんをすすりながらふんふんも頷いている。




