4話
ドアスコープがないって不便だよなと思いながら、むつはドアを開けた。
「あら…」
菜々が食事を持ってきてくれたのかと思っていたが、立っていたのは玲子だった。お盆には土鍋と椀、それから水の入ったボトルが乗せられている。
「重たいんで…良いですか?入って」
「あ、うん…どうぞ」
むつが、ドアを押さえていると玲子はすぐに入室して、勉強机の上にお盆を置いた。
「菜々は?」
「朋枝先生なら、他の先生につかまって何か話をしてたので…食堂にいた、わたしが代わりに」
「あ、そう。ありがと…座る?紅茶なら淹れてあげられるけど」
用事が済んだなら、さっさと出ていくかなとむつは思ったが、玲子は意外にも自分で淹れますと言い、ポットに水を足していた。そんな玲子を横目に見ながら、むつは水の入ったボトルを机に置いてお盆を持つとベッドに座った。
「病人じゃないから、それじゃ足りないかもしれないですね」
「とりあえず、お腹に入れば良いよ」
土鍋の蓋を開けると、煮込んだうどんだった。椎茸や人参、肉も入っていて、ボリュームはありそうだった。
「お粥かと思ってましたけど…体調不良の人向けじゃない気がしますね。朋枝先生は、何て言って頼んだんでしょうか」




