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1話
「はぁ…」
菜々を見送って戻ってきたむつは、疲れたような顔をしていた。髪の毛も少し、ぼさぼさになっている。ヘアゴムを外して、わさわさと髪の毛をかきあげると、パラパラと乾いた泥が落ちてきた。
「げっ…最悪だ、ごめーん」
むつはすぐに倉庫兼ロッカールームに入っていくと、掃除機を出してきた。そして、落ちた泥を片付けるとキッチンに入っていった。
「あ、颯介さんちょっと」
すぐに引き返してきたむつは、櫛を持ち颯介を引っ張ってキッチンに戻った。何をするのかと、祐斗が覗き込むとシンクに頭を乗せたむつの髪を颯介がといていた。櫛を通すと、パラパラと泥が落ちていった。
「仕事の依頼、引き受けるの?」
「まぁね…あいつどのくらい待ってた?」
「2時間くらいかな?むっちゃんから戻るって連絡貰った後だったし、外出したらって言ったんだけどね」
「そう…そんだけ緊張でもしてたのかな」
一通り、櫛を通して貰うとむつは礼を言って髪の毛を縛り直した。そして、ついでのようにタバコに火をつけた。何を考えてるのか、むつは換気扇に吸い込まれていく煙をぼんやりと眺めていた。




