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4話
むつが見ているのは、天使の絵だった。ぷくぷくとした身体に金色のくるっとした髪に、青い瞳の可愛らしい絵だった。だが、描かれているはずの天使の瞳がきょろっと動いてむつを見た。そして微笑んでいたはずの口元は、にやっと歪んだ。
「うわっ‼」
慌てて下がったものの、引いた足をつける部分はもうなかった。かくんっとむつは落ちた。
「おいっ‼」
落下すると思ったむつだったが、片足が運良く引っ掛かり、かしゃんっと脚立に背中をぶつけた頭を下にしてぶら下がる形になった。むつが落ちたにも関わらず、しっかりと脚立を支えてくれていた西原のおかげで、そのまま倒れる事は免れた。
「だ…大丈夫か?」
「大丈夫ない…」
足を引っ掻けた状態のまま、むつは意外と冷静にどうやって体勢を立て直すか考えていた。
「先輩、そっちに…あたしと反対の方に体重かけて支えてくれる?何とか…する」
「何とかって、どうすんだよ」
流石にこの状況に、西原は驚きを隠せない様子だったが、むつが言った通りに動いてくれた。




